※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・投資・法律に関する助言(アドバイス)ではありません。
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アメリカで子供のためにお金を貯めようとすると、529、トランプアカウント(Trump Account)、UTMA、それから親名義の普通の証券口座と、選択肢が4つ出てきます。
どれも「子供のために貯める」でひとくくりにされがちですが、ルールはまったくの別物です。しかも困ったことに、アメリカ人向けの解説をそのまま読んでも、うちのように「いつか日本に帰るかもしれない」家庭では判断ができませんでした。アメリカ現地での判断軸は主に学資援助(FAFSA)と税金とコントロールの3つ。「帰国したらこの口座はどうなるの?」という論点は、そもそも出てこないのです。
なので、この記事は帰国の可能性がある家庭が考える順番を念頭に置いて、4つの制度をその判断材料として並べています。制度の数字は2026年8月に確認したものです。
帰国の可能性がある家庭は、この順番で考える
最初に見るべきは制度の優劣ではなく、「お子さんがアメリカ生まれかどうか」と「SSNがあるか」です。この2つで、そもそも入れる口座が決まります。
- アメリカ生まれ(米国市民)でSSNあり:4つとも選べる。2025〜2028年生まれなら、トランプアカウントの1,000ドル政府拠出の対象にもなる
- 日本生まれでSSNあり(駐在・永住で帯同):529・UTMA・課税口座に加え、トランプアカウントの口座開設もできるようですが、ただし1,000ドルはもらえない
- SSNなし:トランプアカウントは開けない。529はITINでも口座名義人・受益者になれるので、選択肢はここから
そのうえで、我が家の現在地はこうです。529は毎年積み立てている。トランプアカウントは政府の1,000ドルを申請して、そこから様子見。UTMAとRoth IRAは保留。 それぞれの理由は後半の節で書きますが、まずは4つを一枚の早見表にしておきます(スマホの方は横にスクロールしてください)。
| 529 | トランプアカウント | UTMA/UGMA | 課税口座(親名義) | |
|---|---|---|---|---|
| お金の持ち主 | 親(受益者は変更可) | 子(18歳から本人) | 子(18〜21歳で完全に本人) | 親 |
| 使い道 | 教育費(K-12は年2万ドルまで) | 18歳まで原則引き出し不可 | 子のためなら何でも | 制限なし |
| 年間の上限 | 拠出上限なし(贈与税の枠は1人1.9万ドル) | 5,000ドル(雇用主分2,500ドル含む) | 上限なし(贈与税の枠は同じ) | なし |
| 運用益の税金 | 適格支出なら非課税 | 引き出しまで繰延 | 子の税率(kiddie tax注意) | 親の税率 |
| 帰国したら | 証券会社によっては拠出停止 | 不明(規則待ち) | 子名義のまま残る | 親の口座として残る |
4つの制度、それぞれ何が違うのか
529プラン|教育費に使うなら非課税、親が最後までコントロールできる
州が運営する教育資金口座で、運用益は教育費に使う限り非課税。名義人は親のまま、受益者だけを子供にするので、進路が変わったら兄弟に付け替えられるのが最大の安心材料です。
2026年の主な数字を並べます。贈与税の年間非課税枠は1人あたり19,000ドル(2025年から据え置き)。5年分を前倒しで入れる「superfunding」を使えば、1人から95,000ドル、夫婦なら190,000ドルまで一度に入れられます。
使い道も広がりました。2026年1月からは小中高(K-12)の引き出し上限が年10,000ドルから20,000ドルに倍増。2025年7月以降は教材や家庭教師、標準テスト、溶接やトラック免許(CDL)のような職業資格の費用も適格になりました。
そして「余ったらどうするの」問題には、529からRoth IRAへのロールオーバーという出口があります。条件は4つ。生涯35,000ドルまで、口座開設から15年以上、直近5年に入れた分は対象外、年間はRoth IRAの拠出上限(2026年は7,500ドル)の範囲内です。
州税の控除は州ごとに違います。中西部の例だと、ミシガンのMESPは州の課税所得から夫婦合算10,000ドル(単身5,000ドル)まで控除。オハイオは受益者1人あたり年4,000ドルで、超過分は無期限に繰り越せます。オハイオは2023年以降、他州の529への拠出も控除対象なので、州をまたいで引っ越した家庭でも使いやすいです。
トランプアカウント|2026年7月開始、18歳でIRAに変わる
2025年7月4日に成立した法律(通称One Big Beautiful Bill)で新設された、子供名義の投資口座です。IRSの案内どおり、拠出は2026年7月4日から始まりました。
対象はその年の暦年末に18歳未満で、就労可能なSSNを持つ子供。Form 4547という様式で選択(election)をします。年間拠出上限は5,000ドルで、雇用主が入れてくれる場合はそのうち2,500ドルまで。上限は2027年以降インフレ調整されます。
投資先は「S&P 500など主に米国株の指数に連動する投信・ETF」に限定。子供が18歳になる暦年の1月1日まで原則引き出せず、18歳以降は従来型(Traditional)IRAとして扱われます。つまり「教育資金」というより「子供の最初の老後資金」に近い性質の口座です。
話題の1,000ドルの政府拠出(パイロットプログラム)は、2025年1月1日〜2028年12月31日生まれ、米国市民、SSN保有の子供だけが対象です。自動ではなく、Form 4547で申請して初めて入ります。IRSの発表では、2026年3月末時点で400万人超が登録し、100万人超が1,000ドルを申請済み。
もうひとつ、ニュースになったDell夫妻の「Invest America」の250ドル拠出は実在していて、2026年8月時点でも受付中です。対象は2016〜2024年生まれ(10歳以下を優先)で、住んでいるZIPコードの世帯所得中央値が150,000ドル以下、という条件です。市民権が要件になっているかは公式ページの記載で確認が必要なので、申請前に investamerica.org を読んでください。
UTMA/UGMA|18〜21歳で完全に子供のものになる
未成年に財産を贈与するための仕組みで、証券会社でカストディアル口座として開けます。入れた瞬間に法律上は子供のものになり、親は「管理人」にすぎません。
いつ子供の手に渡るかは州法で決まります。ミシガンは原則18歳(設定時に最長21歳まで延長可)、オハイオは原則21歳(最長25歳まで延長可)。18歳になった子供が「全額もらいます」と言えば、親には止める権利がありません。この一点だけで、UTMAをやめる家庭もあるでしょう。
税金面ではkiddie taxに注意が要ります。2026年は子供の運用収益のうち最初の1,350ドルが非課税、次の1,350ドルは子供の税率、合計2,700ドルを超えた分は親の税率になります。「子供名義にすれば税金が安い」は、額が小さいうちだけの話です。
課税口座(親名義)|制度の縛りゼロ、そのかわり税優遇もゼロ
親の名前で普通に開ける証券口座に、「子供用」と心の中でラベルを貼っておく方法です。拠出上限も使い道の制限もなく、帰国しても親の口座として残ります。
税優遇はありません。ただ、1年超保有した分は長期キャピタルゲイン扱いになり、2026年は課税所得が夫婦合算98,900ドル(単身49,450ドル)以下なら税率0%です。この枠に入る年は、課税口座でも実質非課税に近い動きをします。
判断を分ける3つの質問
制度の違いを頭に入れたうえで、どれを選ぶかは次の3つの質問で決まります。
「このお金は最終的に誰のもの?」 529と課税口座は親、トランプアカウントとUTMAは子供です。子供が18歳で進路を変えたときに「親が使い道を決められる状態を残したいか」が分かれ目になります。
「毎年税金がかかる?」 529とトランプアカウントは運用中の課税なし。UTMAはkiddie taxのしきい値(2,700ドル)を超えると親の税率、課税口座は毎年親の税率です。
「使い道は縛られる?」 529は教育費、トランプアカウントは18歳まで引き出し不可、UTMAと課税口座は自由。ただし「自由」は「子供が自由に使える」(UTMA)と「親が自由に使える」(課税口座)では意味合いが違います。
補足:FAFSAの5.64% vs 20%の話が、駐在員にはあまり効かない理由
アメリカの解説記事でよく見るのが「親名義資産(529含む)は学資援助の計算で最大5.64%しか算入されないが、学生名義(UTMA)は20%も算入される。だからUTMAは不利」という説明です。数字自体は正しいです。2024-25年度からは祖父母名義の529がFAFSAで一切算入されなくなる改善もありました。
ただ、この話は「アメリカの大学にFAFSAで学資援助を申請する」前提です。帰国して日本の大学に進む可能性がある家庭では、この差はいったん脇に置いてよいと思います。永住・グリーンカードで「アメリカの大学」が既定路線の方は、学費と学資援助の話を別記事にまとめる予定なので、そちらで詳しく書きます。
駐在員の方・一時滞在の方が先に確認すべきこと
ここが、アメリカ人向けの記事には出てこない部分です。
① 1,000ドルは米国市民の子供限定。 日本から連れてきたお子さんは、SSNがあっても対象外。口座は開けても政府からの入金はない、というのが2026年8月時点のルールです。
② SSNがないと口座そのものが作れない。 トランプアカウントは就労可能なSSNが要件で、口座開設と1,000ドルは要件が別。529はITINでも可。
③ 帰国後、その口座を維持できるのか。 ここが一番の問題です。たとえばFidelityの公式FAQはこう書いています。海外転居後も既存口座は保持できる。ただし海外居住者は529の新規開設も、既存529への拠出もできない。2014年8月以降は投信の新規買付もできない(配当再投資は可)。Vanguardは「商品・サービスは米国居住者向け」と特別通知を出しています。証券会社によって扱いが違います。口座を開く前に「海外転居後のポリシー」を一度確認しておくと、帰国時に慌てずにすむかもしれません。
④ 日本に戻ったときの課税・贈与税はどう考えるか。 国税庁のタックスアンサー(No.4432)によると、受贈者が国外に住んでいても、贈与者・受贈者の住所歴によっては国外財産も贈与税の対象になりえます。では529の運用益は日本でどう扱われるのか。UTMAへの拠出は、贈与としていつ完了したとみなされるのか。トランプアカウントにいたっては、IRA類似口座としていつ課税されるのかすら分かりません。ここは一次資料が見当たらず、現時点では私も判断できませんでした。帰国が具体化した時点で、日米両方に詳しい税理士に相談する前提で考えています。
⑤ 529は日本の大学に使える? 連邦のTitle IVに参加している海外校(Federal School Codeがある学校)なら適格とされていて、海外の適格校は400校を超えます。studentaid.gov の「Federal School Code Search」で州の欄を「FC(Foreign Country)」にして検索できます。過去のリストには東北大学が載っていました。ただしリストは年度ごとに更新されるので、志望校が出てきた時点で最新版を要確認です。
⑥ 永住・グリーンカードの方はここが変わる。 帰国前提が外れると、FAFSAと州内学費の話が判断の中心に戻ってきます。もうひとつ。グリーンカードを将来放棄する可能性がある方は、「Covered Expatriate」の扱いに注意です。該当すると529が全額みなし分配として課税される(10%ペナルティは免除)、という会計事務所の解説があります。該当しそうなら、これも専門家に相談しないといけない案件です。
我が家がいま、こうしている理由
529を毎年積み立てている理由。 教育費は、進路がどうなろうとほぼ確実に出ていくお金だから。これに尽きます。帰国しても口座自体は残り、余ったらRoth IRAへ回す出口もできて、しかも親がコントロールを握ったまま非課税で育てられる口座は、これ以外にありません。また、積み立てはしているといっても、州税のベネフィットがある範囲のみ。そこまで大金ではないので、これは続けていくつもりです。
トランプアカウントを1,000ドルの申請だけで様子見にした理由。 始まったばかりで、IRSも「今後規則を出す」と言っている段階だからです。帰国後の扱いは白紙。18歳まで引き出せない口座に、ルールが固まる前から自分のお金を大きく入れる理由が見つかりませんでした。
ひとつだけ決めているのは、生まれ年で1,000ドルの対象になる子とならない子が分かれる場合の扱いです。うちは対象外の子にも親が同額の1,000ドルを入れて、きょうだいで揃える予定でいます。制度の線引きで差がつくのは、親としては気持ちが悪いので。
UTMAとRoth IRAを小学校高学年まで待とうと思っている理由。 子供のRoth IRAは、子供自身に稼得所得(earned income)がないと拠出できません。小さいうちはなかなかハードルが高いのです。それに、子供名義の口座は「一緒に投資を勉強する」タイミングで開いたほうが、教育としての価値が出ると思っています。UTMAも同じで、18歳で全額渡す前提の口座は、本人がお金の話を理解できる年齢になってからで遅くないかなと感じています。
まだ決めていないこと。 529に今後「どこまで」入れるかは、正直、進路次第です。教育費が思ったよりかからなかった場合、Roth IRAへ逃がせるのは35,000ドルまで。それを超える分は「教育以外に使うと運用益に課税+10%ペナルティ」の世界に入ります。ここは決め打ちせず、年ごとに見直すのが現実的だと思っています。
よくある質問
途中で帰国が決まったら529はどうなる? 口座は残ります。拠出を続けられるかは証券会社次第で、Fidelityの場合は海外居住者の拠出不可。日本の大学に使えるかは、Federal School Codeの有無で決まります。
兄弟間で受益者を変更できる? 529はできます。UTMAとトランプアカウントは子供本人の財産なので、付け替えはできません。
日本にいる祖父母からお金を入れてもらえる? 529には第三者からの拠出が可能で、2024-25年度以降は祖父母名義の529もFAFSAに影響しなくなりました。ただし日本側の贈与税(受贈者・贈与者の住所歴で判定)は別の話なので、金額が大きいときは事前に確認を。
全部やる必要はある?1つだけ選ぶなら? 帰国の可能性がある家庭なら、私なら529です。親がコントロールでき、帰国しても口座が残り、余っても出口がある。この3つがそろっているのは529だけでした。
まとめ|「制度の優劣」ではなく「うちの前提」で選ぶ
4つの制度に正解はなく、あるのは「うちの前提」に合うかどうかだけです。お子さんの生まれた国、SSNの有無、帰国の可能性。この3つを書き出してから早見表に戻ると、消える選択肢と残る選択肢がはっきりします。
制度の数字は2026年8月に確認したものですが、トランプアカウントは特に動きが速く、IRSの最終規則で変わる可能性があります。口座を開く前に、IRSと各州529の公式ページで最新の数字を確かめてください。日本側の課税は、断定できる一次資料がまだありません。帰国が見えてきたら、日米両方を見ることができる専門家へ。
なお、口座が4つに分かれると、子供のお金の全体像が見えにくくなります。うちは口座をまとめて見るのに無料の家計簿アプリEmpowerを使っているので、その使い方はEmpowerのレビュー記事をどうぞ。








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