※本記事は個人の体験談・一般的な情報であり、医学的な助言(アドバイス)ではありません。症状や治療については必ず医師にご相談ください。
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子どもを連れてアメリカに来るとき、荷物やビザや家探しで頭がいっぱいで、予防接種のことはつい後回しになりがちです。でも実際に暮らし始めると、この「予防接種の記録」が入園や入学のたびに必要になってきます。
いちばん戸惑うのは、アメリカに母子手帳という文化がないこと。日本ではあの一冊にすべてが書き込まれていましたが、こちらでは記録の持ち方も、必要なワクチンの種類も、少しずつ違います。しかも数年で帰国する予定の家庭だと、両国のスケジュールのずれをどう埋めるか、という悩みまで出てくる。
書いてみたら少し長くなってしまったのですが、日本のスケジュールの確認、アメリカの学校要件、母子手帳の持って行き方、一時帰国で打っておきたいもの…と分かれているので、気になるところがあれば、目次から飛んでいただければと思います。それでは、まずは記録文化の違いや日本の状況のおさらい、ミシガン州の入学要件、日本にしかないワクチン、期間限定滞在のずれ、母子手帳の持ち込み、一時帰国で補うもの、と進めていきたいです。
まず、日本とアメリカでは「記録の残し方」が違う
日本では、母子健康手帳が予防接種の台帳を兼ねています。いつ何を打ったか、あの一冊を見れば全部わかる。とても便利な仕組みでした。
アメリカにはこれがありません。かわりに、小児科(ペディアトリシャン)が Immunization Record という接種記録の書類を発行してくれます。学校やデイケアに入るとき、進級のとき、引っ越しで転校するとき。そのたびに、この記録の提出を求められます。日本のように国が一元管理しているわけではないので、この紙は自分で大切に保管するのが基本です。なくすと再発行の手間がかかるので、コピーを1枚取っておくと安心。もちろん、再発行にかかる時間も病院次第で、最近はみんな電子レコードがあるので、比較的早いかと思いますが、それでも電話したりメール書いたり、出向いたりしないといけないことを考えると、紙バージョンは保存は大切にしておいて、スキャンしてスマホに入れておくのもいいかもしれません。
また、接種の進め方も違います。日本は1回の受診で1〜2本、間隔をあけて打つことが多いですよね。アメリカでは1回で4種以上をまとめて打つことも珍しくありません。
また、ここで便利なのが、日本での記録を英語でも読める形にして持っていくこと。あると話が早いかと思います。具体的な持って行き方は、後半でまとめます。
日本の予防接種スケジュールのおさらい
まず、日本で受けてきた(あるいはこれから受ける)ワクチンを整理しておきましょう。2024年4月から、ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ・Hibを1本にまとめた五種混合ワクチンが導入されたそうです。そのため、下の子と上の子で名前が違う、ということも起きています。
日本の定期接種の大まかな流れは、こんな感じかと思います。
- 生後2ヶ月:五種混合①・小児用肺炎球菌①・B型肝炎①・ロタ①
- 生後3〜4ヶ月:五種混合②③・肺炎球菌②③・B型肝炎②・ロタ②③
- 生後5〜8ヶ月:BCG、B型肝炎③
- 1歳:MR(麻しん風しん)①・水痘①・五種混合と肺炎球菌の追加
- 3歳:日本脳炎(1期)
- 就学前の1年:MR②
- 9〜10歳:日本脳炎(2期)。1期から数年あいての追加接種です
- 11歳ごろ:二種混合(DT)
任意接種には、おたふくかぜ(1歳から2回が推奨)とインフルエンザ(毎年)があります。ロタは初回を生後14週6日までに始めるルールがあるなど、月齢の縛りが細かいものも。渡米前に、どこまで終わっているかを一度書き出しておくと、あとで本当に楽になります。
アメリカ(ミシガン州)で学校に入るときのワクチン
親にとって、ここがいちばん気になるところですよね。アメリカの入学要件は州ごとに決まっているので、ここではミシガン州を例に整理します。ほかの州にお住まいの方は、その州の保健局のページで確認してくださいね。
幼稚園・キンダー入園(4〜6歳)で求められるもの
ミシガン州が公表している必要ワクチンは、現時点では次のとおり。
- DTaP(ジフテリア・破傷風・百日せき):4回(うち1回は4歳以降)
- ポリオ:4回(3回目を4歳以降に打っていれば3回)
- MMR(麻しん・おたふく・風しん):2回(1回目は12ヶ月以降)
- B型肝炎:3回
- 水痘:2回(12ヶ月以降)、または罹ったこと・免疫があることの証明
日本で受けてきたものと重なる部分は多いです。ただ、MMRのM(おたふく)は日本だと任意接種。打っていないお子さんもいます。ここがひとつの分かれ目になりやすいところ、と覚えておくといいかもしれません。
7年生(中学)で追加されるもの
学年が上がると、追加で求められるものが出てきます。7年生(や7〜18歳での転入)で加わるのは、Tdap(11歳以降で1回)と 髄膜炎菌ワクチン(MenACWY)(11歳以降で1回)。髄膜炎菌は日本では任意だそうなので、こちらで初めて打つことになる場合があるかと思います。
デイケア・プリスクール・転入のときも記録がいる
義務教育の入学だけではありません。デイケアやプリスクールに預けるとき、引っ越しで転入するとき、そして毎年の進級のときにも、記録の提出やサインを求められることがあります。「入学のとき一度出したから終わり」ではないこともあるので、記録は取り出しやすい場所に置いておくと安心。
なお、非医療的な理由で接種を見送る場合は、地域の保健局(local health department)で certified waiver を取る手続きが必要になります。ただし、はしかなどが流行したときには、未接種の子が一時的に登校を止められることもある、と州は案内しています。この判断は各家庭のものなので、迷う場合はかかりつけの小児科に相談してください。
注意:アメリカの推奨スケジュールは、2025〜2026年にかけて一部が見直されています。ここは動きが速いところ。この記事に書いたのはミシガン州の「学校入学に必要なワクチン」で、こちらは州の規定として比較的安定しています。一方、CDCの推奨内容そのものは変わることがあるので、最新版は必ずかかりつけの小児科で確認してください。
日本にあって、アメリカにないワクチン
逆に、日本では当たり前なのにアメリカの定期接種に入っていないものが2つあります。BCGと日本脳炎です。
BCG(結核)は、日本では生後5〜8ヶ月ごろに受けるスタンプ型の接種。アメリカでは基本的に行いません。ここで知っておきたいのが、BCGを受けているとツベルクリン反応が陽性に出やすい、ということ。そのために、学校や大学の健康診断で結核検査に引っかかる、という話は実は珍しくありません。でも、理由がわかっていれば大丈夫ですよね。その場合は血液検査(IGRA)や胸部レントゲンで「人にうつす状態ではない」と確認する流れになります。BCGを受けた記録さえ見せられれば、たいていはそこで話が済みますので、頭の隅に置いておくといいかもしれません。
日本脳炎は、蚊が媒介する病気で、アジアを中心に推奨されているワクチン。アメリカでは定期接種ではありません。このあたりは「日本に帰る予定があるか」で判断が変わってくるので、もう少し後半の一時帰国のところも含めてもう一度整理したいと思います。
数年で帰る予定なら、両国の「ずれ」をどう考えるか
いちばん悩ましいのが、駐在などで滞在期間が決まっているご家庭だと思います。アメリカの要件に合わせて打つべきか、日本のスケジュールを崩さないほうがいいのか。両方をきっちり満たそうとすると、本数が増えて子どもの負担も大きくなる可能性も。
私の中での考え方のひとつが「今いる国で必須のものを軸にして、足りない分は帰国後に日本で補う」という整理です。アメリカで暮らす間は、学校やデイケアに入るために必要なものを優先する。BCGや日本脳炎など日本側で必要になるものは、帰国のタイミングや一時帰国で調整する。ただ、これも月齢やお子さんの状況で最適解が変わります。また、正直ここは人によるかと思います。なので、かかりつけの小児科と相談しながら決めるのがいちばんかもしれません。渡米前に日本の主治医へ「アメリカに数年行きます」と伝えて、打てるものを前倒しできるか聞いておくのも手だと思います。
母子手帳を、どうやってアメリカに持っていくか
さて、いちばん困りやすいところ。アメリカには母子手帳がない。では、日本での記録をどう持っていけばいいのでしょう。
ひとつは、英語版(または英語・日本語併記)の母子健康手帳を用意しておく方法です。市販されていて、母子衛生研究会などからも入手できます。海外で出産した場合も、領事館で母子手帳を受け取れるケースがあります。日本語だけの手帳では、アメリカの小児科の先生は読めません。英語で書かれていれば、そのまま見せて記録を引き継いでもらえます。我が家も第一子の分はもらいました。
もうひとつは、接種記録だけを英訳しておくやり方。母子手帳まるごとではなく、予防接種のページを英訳して1枚にまとめておく。それだけで、小児科で「これまで何を打ったか」を伝えるのがぐっと楽になります。
そして、現地での工夫として。ノバイ市のように日本人が多い地域には、日本人の対応に慣れた病院があります。こうしたところでは、母子手帳に貼り付けられる形で接種一覧を出してくれる場合も。日本語で相談できる安心感もあるので、近くにそうした選択肢があるなら、最初のうちは使ってみる価値があると思います。
どの方法でも、おすすめしたいのは記録を1冊(もしくは1箇所、1つのPDF)にまとめておくこと。アメリカで打ったものを日本の母子手帳にも書き込んでおけば、帰国したときに「これは日本の定期接種のどこに当たるのか」を照らし合わせやすくなります。逆も同じ。日本の記録が英語で読めれば、こちらでの入学手続きがスムーズに進みます。
日本へ一時帰国したときに打っておきたいもの
一時帰国は、日本でしか受けにくいワクチンを補う良い機会です。さっき触れたBCGと日本脳炎が、その代表かと思います。
日本脳炎は、1期(3回)と2期(1回)に分かれています。標準では3歳から始めますが、事情があれば生後6ヶ月から接種することも可能と聞いたので「アメリカにいる間に3歳を過ぎてしまった」という場合でも、一時帰国で受け始められるかと思います。
ここで知っておきたいのが費用の仕組みです。日本に住民票があれば、対象年齢の範囲内は定期接種として無料で受けられるようですが、住民票を抜いて渡米している場合がほとんどだと思うので、その場合は、自費になることが多いとのこと。日本脳炎の自費は、目安として1回あたり5,000〜8,000円程度とされています。里帰りの日程が短いと3回を打ちきれないこともあるので、帰国前に自治体や小児科へ「何回打てるか」や「いくらかかるのか」などを確認しておくと、計画が立てやすくなります。
そして帰国後の、もうひと手間。アメリカで受けた接種は、日本の母子手帳に転記してもらえます。自治体によっては、海外で受けた記録の母子手帳への記入を受け付けてくれるのです。ここでも、英語の記録が手元にあると話が早いかと思います。
まとめ
最後に、子連れで渡米するとき、頭に入れておきたい点を整理します。アメリカに母子手帳はなく、Immunization Record(記録カード)は自分で保管するのが基本です。学校の要件は州ごとに違い、ミシガンならMMR2回・水痘2回・B型肝炎3回などが軸になります。おたふくと髄膜炎菌は日本で任意なので、要注意のポイントかと思います。BCGと日本脳炎は日本で受けるものなので、一時帰国がそれらを補うチャンスになるかと思います(住民票があれば無料、なければ自費とのこと)。そして何より、記録は英語で読める形にして1冊にまとめておくこと。英語版母子手帳や、日本人対応に慣れた病院の一覧が、その助けになります。
制度も推奨も年々変わりますし、月齢やお子さんの状況で最適解は一人ひとり違うかと思いますので、この記事は全体像をつかむ地図くらいに使っていただけたらと思います。また、実際の判断は、かかりつけの小児科と、お住まいの州・自治体の最新情報で確かめてくださいね。その際には英語で読める記録を1枚持っているだけで、その相談がずいぶん楽になるはずです。
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出典(2026年8月調査時点。制度・数値・推奨は変更される場合があります):日本のスケジュールはKnow VPD! 予防接種スケジュール、国立健康危機管理研究機構、厚生労働省 子どもの肺炎球菌ワクチン。ミシガン州の学校要件はMDHHS School and Childcare Immunization InformationおよびMDHHS Pub-1378「Vaccines Required for School Entry in Michigan」。日米の違い・記録の扱いはアメリカの予防接種(HanaCell)。アメリカの推奨の見直しはCRS Report R48982 “The 2026 Childhood Immunization Schedule”。一時帰国・日本脳炎の費用と手続きは日本脳炎ワクチンの打ち忘れ(手続きプランナー)、海外で受けた予防接種の母子手帳転記(川口市)。英語版母子手帳は母子健康手帳 英語/日本語(molcom)。






